バリ島ともお別れ -スミニャック-
written by kuro
夕日に照らされた、赤ちゃん。
バリ島での最後の夜。
明日はクアラルンプールに戻り、2泊だけして遂に日本へ帰国となる。
この旅で一体どれほどの場所に、別れを告げて来たのだろう。
でも、今までとは明らかに違う。
別れが、妙に名残惜しい。
贅沢な旅だったので、どれほど気に入って愛着が湧いた場所があったとしても、俺らには次の楽しみな場所が必ず待っていた。
でも次は、帰国の為の中継地点でしかない。
日本があるでしょ?
そりゃあ、日本に帰国するのは楽しみではある。
久しぶりの日本に足を踏み入れた時、何を思うのだろうか?
だけど、日本は新しい未知なる国ではない。
見たことのない何かを発見したり、テレビでしか見たことのない景色を実際に目の当たりにしたり・・・
そんな夢のような時間の中に、ずっと居続けていたんだ。
そろそろ・・・、少なからず今よりは同じ事を繰り返す日々が待ち受けている。
朝起きて、電車に乗り、仕事をして、同じ家に帰ってくる。
幸いビジネスライクの人間ではあるので、仕事をするのは楽しみでもある。
でも、やっぱり旅の終わりを名残惜しくは感じている。
「もう、旅が終わっちゃうんだよ。」
2人で話すそんな言葉にも、何故か心はフワフワして実感があるのか、ないのかよくわからない。
帰国までの残り3日間で、もっと現実を見始めるのかなあ・・・
あと少しだけ、異国の雰囲気を楽しんでいてもいいよね。
光の中を元気に歩き回る赤ちゃん。
お母さんは、少し離れた所でちゃんと見守っている。
海外ではこういう距離感をよく目の当たりにしたっけ。
乳幼児とはいえ、少し離れて見守る。
乳幼児とはいえ、海に顔をつけさせたり、泳ぐ素振りをさせてみようとする。
この辺の距離感は、日本とは一線を画している気がした。
おやおや、波にさらわれちゃいますよお。
流石に波の届く所では、お母さんがピタリと寄り添う。
それでも、楽しそうに遊んでいる赤ちゃんを、その場から連れ去る事はしない。
海が怖くはないんだね。
一度も泣いている様子は無かった。
横では嬉しそうに笑いながら、赤ちゃんを見つめ写真を撮っているカヨ。
あんたも、好きだねえ。
ワンちゃんもね。
そんなバリ島の最後の夜は、一番おいしかったと思えたレストランへ。
4人で行ったサテ・バリ。
全く同じ席が空いていたので、今夜はそこに2人で座る。
今回は赤ワイン。
料理は前回と同じミックス(魚と肉)のコース。
ここの前菜が本当に美味しいんだよなあ。
バランスと味付けが絶妙。
今夜はのんびりマイペースに、時には無言でワインを飲みながら浸ってみたり。
無言の時間も共有できるパートナーがいるのは本当に素敵な事。
いつの間にかワインも無くなり、心地よいフワフワ感と大満足していた2人。
「旅に出て良かったなあ。」
旅に出た事も、もうすぐ旅が終わる事にも、ちゃんと満足できている。
いい時間を過ごしている。